「密着力」という言葉

 

当社の技術は硬質皮膜工具、金型の長寿命化の目的で使用されます。

コーティングにより、数倍寿命延長されれば目的達成となりますが、
効果がでない場合もあります。
状態を聞くと「密着力が弱いので膜が剥離した!」
と言われることがあります。
これも前回の「硬さ」同様にコーティングメーカーを
悩ませる言葉です。

「密着力」とは、
基材表面と膜の境界(界面)が、どのくらい強固に付いているかということになります。

PVDは基材と結合しておらず、「乗っている」状態ですので
基材の表面状態が重要となります。

当社膜の密着性の社内評価は、超硬材の鏡面テストピースで判断します。
この表面を変形させ膜剥離の状態で合否判定します。
もちろん社内規定で合格したことを確認して出荷しております。

では何が原因で「密着力弱いので剥離した!」となるのか?

1、膜の表面に加工される材料がこびりついている。それが剥離に見える。
ちょっと磨くと、ダメージのない膜が表面にでてきます。
案外この事例があります。

2、加工する材料が膜の成分と親和し、剥離した。
「硬さ」、「密着」ではない「親和」という要素。
結合、反応のしやすさと言えるでしょう。

3、その他に摩擦熱により酸化~変質して剥離した。
(一般的に膜が酸化すると軟質化します。)

4、基材と膜の硬度差が大きく、基材の変形に追従できなくて剥離する。
硬すぎたり膜厚が厚く、膜がパリッと割れることがあります。
(膜硬度が低く粘りのある膜は密着が上がり、膜硬度が高い膜は密着が下がる傾向です。)

5、基材の表面状態に問題があり、成膜初期から剥離が発生している。
(変質層、表面が粗い等、特に凹みの中は成膜できない。)

コーティング側の原因もあります。
(a)製品への加熱不足。
(b)炉内全体の搭載バランスが悪く、プラズマの付きまわりにムラができた。
等、いろいろな要因が考えられます。

以上のことが複合的に重なっている場合もあります。
「密着力」も奥の深い言葉です。